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災害対策・BCPに関するアンケート結果

2026年11月01日

BCP策定率は45.8% 「策定後の社内浸透」が課題に

■ 1. 調査結果のポイント

近年、南海トラフ巨大地震への警戒や激甚化する台風・豪雨被害を受け、企業における「事業継続計画(BCP)」の重要性がかつてないほど高まっています。浜松商工会議所では会員事業所を対象に災害対策・BCPに関する実態調査をオンラインで行い、結果をまとめました。

本調査(有効回答数:227社)から明らかになった主なポイントと考察は以下の通りです。

(1)「作って満足のBCP」の存在と、見過ごせない「部分対策」の厚み

・全体のBCP策定率は 45.8%(104社)となりました。しかし、そのうちの約3割にあたる 12.8%(29社)は「策定しているが見直していない」と回答しており、作った後の見直しが止まっている現状が浮き彫りとなりました。

・一方で、BCP未策定企業(54.2%)のうち、実に 34.8%(79社)が「データ保存や備蓄、安否確認など部分的な対策は実施している」 と回答しています。「策定済み」と「部分対策」を合わせると、全体の 80.6% がすでに何らかの防災・減災アクションを起こしています。「何ひとつやっていない未着手企業」は 18.5%(42社)にとどまり、地域の危機意識そのものは非常に高い水準にあります。

(2) BCPを策定した企業ほど「社内の温度差」に悩んでいる

・BCPを進める上での課題を策定状況別に見ると、非常に興味深い逆転現象が見られました。「社内の危機意識・理解が薄い」と回答した企業の 55.8%(24社)が、実は「BCP策定済み企業」 でした。

・計画書を一度作った企業ほど、「現場がBCPを自分事として捉えてくれない」「訓練が形式的になってしまう」という “作った後の壁(社内への浸透不足)” に直面している実態が明らかになりました。

(3) 会社規模による悩みの違い:小規模は「最初の一歩」、中小企業は「人手と時間不足」

・従業員5人以下の小規模事業者では、「何から手をつければよいかわからない」(該当回答の 59.5% を占める)や「費用の確保」が大きなハードルとなっています。

・一方、従業員21名〜300名を中心とする中小企業では、「担当者の時間・人手不足」(58.7%)、「作り方の知識不足」(54.5%)が突出しています。会社の規模に応じたきめ細かなサポートが求められています。

 

■ 2. 調査概要

●対象: 浜松商工会議所 会員事業所
●調査期間: 2026年9月10日(木)~ 9月16日(水)
●調査方法: メール配信によるオンラインアンケート調査
●有効回答数:227名(全体 N=227)
●回答企業の内訳

 

 

■ 3. 質問別単純集計

1)最優先は「人命」と「現場」—— 85%が社員の安全を第一に懸念

 Q1. 災害発生時、自社の事業継続について最も懸念しているリスクは何ですか?(最大3つまで複数回答)サンプルサイズ:N=227
※回答件数の総計は延べ回答数(642件)であり、回答比率の合計は 100% を超えます
 (回答比率=回答件数/227名)。

【結果の考察】

「社員・スタッフの安全確保」(85.0%)が突出して1位となりました。人手不足が続く中、「まずは従業員の命と生活を守ることが事業を続けるための大前提である」という考えが強く共有されています。次いで「工場の建物や機械設備の破損・水害」(67.4%)、「電気や水道などの寸断」(52.4%)が続いており、事業を動かす物理的な基盤が失われることへの不安が目立ちます。

 

2)「8割が何らかのアクション中」
   作った後の見直しと、部分的な備えのまとめが鍵

 Q2. 自社の災害対策・BCPについて、現在の状況に最も近いものは?(単一回答) サンプルサイズ:N=227

【結果の考察】

定期的に見直しまで行えている「生きたBCP」を持つ企業は全体の3分の1(33.0%)にとどまります。一方、策定済みのうち約28%にあたる29社は見直しが行われておらず、内容が古くなっている可能性があります。

注目すべきは、未策定グループの約64%(79社)が「部分的な対策を行っている」点です。立派なマニュアルはまだなくとも、多くの企業が現場ごとの備えを進めています。この「部分的な対策」を無理なく整理し、本格的なBCPへと発展させるサポートが役立ちます。

 

3)二大ボトルネックは「作り方の知識」と「人手・時間の不足」

 Q3. 災害対策やBCPを進める上で、自社において課題やハードルになっているものは?(複数回答可)サンプルサイズ:N=227
※回答件数の総計は延べ回答数(416件)であり、回答比率の合計は 100% を超えます
 (回答比率=回答件数/227名)。

【結果の考察】

約半数の企業が「ノウハウや知識不足」(49.3%)と「担当者の人手・時間不足」(48.0%)を挙げています。普段の業務に追われる中小企業にとって、専任の担当者を置く余裕はなく、「誰が・どうやって作ればいいのか分からない」という現実的な壁があります。お金(費用面 33.9%)の心配以上に、まずは**「作り方の知識」と「取り組む人手・時間」が足りないこと**が、一番の足かせになっていることが分かります。

 

 

■ 4. クロス集計分析

【発見1】 Q1.懸念リスク × 業種グループ

 取引ルート断絶の不安はBtoB企業に集中

各群のサンプルサイズ:BtoB企業 n=129、BtoC企業 n=52、その他 n=46(全体 N=227)

【ポイントと考察】

・「サプライチェーン(仕入れ先や納品ルート)の寸断」を心配している46社のうち、78.3%(36社)がBtoB企業に集中 しています。部品や加工のやり取りが細かくつながっている浜松地域ならではの危機感です。自分の工場が無事でも、仕入れ先や取引先が止まれば自社の仕事も止まってしまうという危機意識が如実に表れています。

・一方、一般の消費者向けに商売をするBtoC企業では「データの消失やITシステムの停止」(46.2%)への心配が目立ち、顧客データやレジ・受注システムのクラウド化が急務となっています。

 

【発見2】 Q2.BCP現況 × 従業員グループ

 会社規模による大きな差:大企業89%に対し小規模は24%

 各群のサンプルサイズ:小規模事業者 n=89、中小企業 n=111、大企業 n=27(全体 N=227)

【ポイントと考察】

・大企業の策定率が 88.9%(大半が見直しまで実施)に達しているのに対し、小規模事業者では 23.6% と約4倍の開きがあります。

・特に小規模事業者では、まだ対策できていない企業が 36.0% にのぼり、「未着手と答えた全42社のうち、32社(76.2%)が小規模事業者」という状況です。中小・小規模事業者の取り組みをどう後押しするかが地域全体の重要な課題です。

 

【発見3】Q3.課題 × 従業員グループ

 中小企業は「時間不足」、小規模事業者は「最初の手順」でストップ

 各群のサンプルサイズ:小規模事業者 n=89、中小企業 n=111、大企業 n=27(全体 N=227)

【ポイントと考察】

・小規模事業者のつまずき:「何から手をつければよいかわからない」と答えた37社のうち、約6割(59.5%・22社)が小規模事業者 です。分厚い計画書ではなく、「まずはここから始めれば大丈夫」というシンプルな手順の案内が必要です。

・中小企業の苦悩:従業員21〜300名の中小企業では、約6割(57.7%)が「人材・時間不足」を挙げています。専任の担当部署を置けず、普段の現場リーダーが兼務しているため、BCPに取り組む時間をなかなか取れない様子が分かります。

 

【発見4】 Q3.課題 × Q2'.BCP策定状況

 BCP策定した企業ほど「社内の理解不足」に悩んでいる

各群のサンプルサイズ:BCP策定済み n=104、BCP未策定 n=123(全体 N=227)

【ポイントと考察】

・作っていない企業の壁は「入口」:「何から手をつければよいかわからない」は未策定企業が全体の 86.5%(32社)を占め、「予算の難しさ」も 71.4%(55社)が未策定企業です。

・作った企業の壁は「社内への浸透」:非常に興味深いことに、「社内の危機意識・理解が薄い」と答えた企業は、未策定企業(19社・15.4%)よりも、策定済み企業(24社・23.1%、全体の55.8%)のほうが多い という結果になりました。「せっかく計画書を作ったのに現場に読まれていない」「訓練をやっても社員の関心が薄い」といった、“作った後の棚上げ状態” に悩む企業が多いことが分かります。

 

■ 5. 現場の声

アンケートの自由回答には、現場を預かる経営者や担当者ならではの「切実な葛藤」が多数寄せられました。各社が直面している壁を、本質的な3つの悩みに集約してご紹介します。

(1)「作ったけれど動かない」…現場との温度差と形骸化への焦り

計画書は完成させたものの、現場の理解が進まず日常業務に埋もれてしまっているという「策定済み企業」特有の深い苦悩です。

•【製造業・従業員101〜300名】
「以前コンサルと作った分厚い計画書があるが、現場は読む余裕がなく書架で眠ったまま。年1回の訓練も点呼だけで形骸化しており、有事に本当に動けるのか焦りがある」

•【サービス業・従業員21〜50名】
「経営層と現場の温度差が大きい。『地震が来たらその時考える』という空気があり、社内勉強会を開こうにも通常業務を理由に敬遠されてしまう」

•【製造業・従業員21〜50名】
「安否確認システムを導入したが、休日の訓練テストでは回答率が半数程度。プライベートへの配慮と報告義務のバランスに苦慮している」

 

(2)「日々の業務で手一杯」…専任不在と「最初の一歩」の迷い

専任者を置けない中小・小規模企業において、日常業務に追われて時間が取れず、自社に合う手順が分からずに足踏みしている実態です。

•【製造業・従業員0〜5人】
「社長自身が現場・営業・経理を兼務しており、計画書に向き合う時間も知識もない。必要性は痛感しているが、何から手をつければよいのか最初の一歩が分からない」

•【建設業・従業員6〜10名】
「行政の雛形をダウンロードしてみたが、大企業向けの内容ばかりで自社には合わなかった。身の丈に合った作り方を相談できる相手もおらず、白紙のまま止まっている」

•【サービス業・従業員0〜5人】
「少人数で営業しているため、悪天候時でも社員を休ませると業務が完全にストップする。人命最優先と納期遵守の板挟みで、毎回判断に胃が痛む思いをしている」

 

(3)「自社単独では限界」…取引先の要請・サプライチェーン寸断・費用の壁

取引先からの要請で対策を進める一方、外部インフラの寸断や売上に直結しない設備投資にどこまで踏み切るべきか、判断基準に悩む声です。

•【製造業・従業員51〜100名】
「主要取引先から策定を強く求められて社内体制は整えた。しかし、仕入先や協力工場が被災した際の代替ルート確保までは自社単独の手には負えず、どこまで責任を持つべきか悩んでいる」

•【建設業・従業員11〜20名】
「耐震化や大型発電機が必要なのは分かるが、売上に直結しない投資に数千万円は出せない。『最低限どこまでやれば十分か』の客観的な基準がなく、投資を決められない」

•【卸売業・従業員21〜50名】
「自社施設が無事でも道路が寸断されれば配送不能になる。同業者間で在庫や車両を融通し合う協定を結びたいが、普段は競合関係にあるため個社同士の交渉は難しい」

 

■ 6. 調査結果まとめ:明日から取り組む事業継続へのヒント

自由記述で浮き彫りになった通り、多くの企業が「社内の温度差・形骸化」「人手不足と最初の一歩の迷い」「自社単独での限界と費用の壁」という課題に直面しています。

しかしその一方で、同じような条件や制約を抱えながらも、知恵と工夫によってこれらの壁を乗り越えようとしている先進的な企業も存在します。下記に、他社の優れた実践事例をまとめました。

【他社の実践事例】 自由回答に見る、すぐ真似できる4つの先進的な工夫

アンケートの中には、「お金をかけずにできる工夫」や「現場を巻き込む知恵」など、悩みを解消するヒントとなる取り組みが見られました。

1)【計画のスリム化】分厚い冊子をやめ、財布に入る「緊急携帯カード」へ

•取り組み企業:製造業(従業員101〜300名)

•実践内容: 何十ページもあるBCPマニュアルは、災害の瞬間に誰も開けません。そこで「初動でやること」「安否の報告先」「避難場所」の3つだけに絞り込み、社員証入れや財布に入る名刺サイズのカード(1枚)に凝縮して全社員に配布しました。

•他社へのヒント: 計画書を新しく作ったり見直したりする際は、まず「現場がポケットに入れておける1枚のシート」にまとめることから始めると、社員への浸透が一気に進みます。

2)【費用の壁をクリア】日常業務で循環させる「無理のない備蓄(ローリングストック)」

•取り組み企業:小売業(従業員6〜10名)

•実践内容: 専用の長期保存食を大量に買い込むと賞味期限切れの廃棄ロスや買い替え費用がかさみます。そこで、来客用のお茶や日常の社内飲料水・お菓子を少し多めにストックし、古いものから順に日常で消費して買い足す仕組みをルール化しました。

•他社へのヒント: 防災専用の特別予算を組まなくても、日頃の消耗品費の買い方を少し工夫するだけで、常に新しい3〜5日分の飲食料が社内に確保できます。

3)【安否確認の浸透】「まず家族の安全を確保」をルールにして回答率向上

•取り組み企業:製造業(従業員21〜50名)

•実践内容: 安否確認アプリの回答率が伸び悩んでいた原因は、「休日や夜間に会社のことまで手が回らない」現場の心理でした。そこで「会社への報告の前に、まずは家族の無事を確認すること」「家族が無事と分かってから、落ち着いてボタンを1つ押せばOK」とルールを改め、訓練配信を家族と防災を話し合う機会として位置づけ直しました。

•他社へのヒント: 「会社のために報告させる」のではなく、「社員と家族の安全を守るための仕組み」と伝えることで、社員の協力意識や参加率が大きく向上します。

4)【データの守りと停電対策】クラウド保存 + 車やモバイルバッテリーの活用

•取り組み企業:サービス業(従業員11〜20名)

•実践内容: 事務所のパソコンが浸水しても仕事が続けられるよう、業務データをクラウド(ネット上の保管場所)へ完全移行。さらに、高価な大型自家発電機を導入する代わりに、社用車から電気を取り出せる「車載インバーター」や大容量ポータブル電源を数台配備し、停電時のスマホ・PC電源を確保しています。

•他社へのヒント: 数千万円の設備投資をしなくても、クラウドツールの導入と市販のポータブル電源等の組み合わせで、低コストかつ実用的な停電・水害対策が可能です。

 

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【調査結果に関する問合先】
浜松商工会議所 情報推進課(053-452-1110)
E-mail:joho@hamamatsu-cci.or.jp

 

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