8月号特集)その悩み、ロボットが解決します「ハマロボ展2026」
ロボットは今、どこまで進化しているのか。そして、企業はどのように活用していけばよいのか。AIの進化によって導入のハードルは下がり、ロボットはこれまで以上に身近な存在になりつつある。ロボット導入の考え方と最新動向について、静岡県ロボット技術アドバイザーの長谷川徹氏に聞いた。
AIでハードルが下がるロボット導入
カギは「育てる」発想と小さな一歩
深刻化する労働力不足は、製造業をはじめ多くの企業にとって不可避の経営課題となっている。限られた人材で生産性を高め、技術や品質を次世代へつないでいくためには、もはやロボット技術を活用した自動化への取り組みが欠かせない。一方で、「何から始めればよいのか分からない」と導入をためらう企業も少なくない。本特集では、現場の課題解決につながる「ハマロボ展2026」の見どころをご紹介。ロボット導入の第一歩の手掛かりとなれば幸いだ。
-お話を伺った4年前(本誌2022年11月号「協働ロボット特集」)と比べて、ロボットの導入状況はどのように変化していますか。
浜松市を中心とした県西部地域は、自動車や二輪車、楽器、工作機械、金属加工、食品加工など、ものづくり産業が集積し、ロボットや自動化技術と相性のいい地域です。その点は4年前と変わりませんが、人手不足や熟練者の高齢化を背景に、導入を検討する企業は増えています。
大きな変化は、活用の場の広がりです。以前は製造業が中心でしたが、最近は食品や物流、介護福祉などにも広がっています。ファミレスで配膳ロボットを見かけることも当たり前になり、ロボットへの心理的なハードルも下がっています。その結果、「自社でも活用できないか」と考える企業も増えていると思います。
-最近は「AI×ロボット」という表現もよく目にします。現場ではどのような変化が起きていますか。
最近は「フィジカルAI」※という言葉も使われています。従来は外部処理に頼る場面もありましたが、現在は学習済みモデルを現場側の機器に搭載することで、その場で状況を判断し、自律的に動ける範囲が広がっています。
また、AIによって導入のハードルも下がっています。以前はティーチングと呼ばれる動作設定に専門的な知識が必要でしたが、最近はAIを活用した経路生成や動作設定支援が進み、設定作業の負担が軽減されつつあります。
※フィジカルAI……AIが「ボディ(ロボット)」を持ち、センサーやカメラを通じて現実世界の状況を認識し、自律的に判断して行動する技術やその概念。
-ヒューマノイドロボットへの注目も高まっています。
現時点では実証実験中で課題もありますが、工場内の点検や巡回など、人が行う作業の代替として期待される技術です。
ロボットは「育てる」もの
-いざ導入しようとなったとき、何から考えればいいのでしょうか。
まずは「何のために導入するのか」を明確にすることです。人手不足の解消なのか、品質の安定なのか、危険作業の軽減なのか。目的によって導入方法は変わります。作業の流れや安全対策、品質基準の設定など、周辺環境も整える必要があります。
-人の採用と似ていますね。
そうですね。私はよく「ロボットを育てる」という言い方をします。最初から完璧に動くわけではなく、実証と改善を重ねながら、自社の現場に合わせて仕上げていく必要があります。
-育てるには思った以上に時間がかかりそうですね。
導入を決めてから実際に稼働するまで、半年から1年ほどかかることも珍しくありません。作業の標準化やレイアウトの見直し、治具の準備など、さまざまな検討が必要になります。そのため必要になってから慌てるのではなく、早めに動き出すことが大切なのです。
-うまくいっている企業には、何か共通点があるのでしょうか。
まず、自動化したい工程が明確になっていること。そして、最初から大規模な自動化を目指さず、加工機への材料投入や検査工程など、小さく始めることが成功につながっています。
もう一つは、現場改善とセットで進めていることです。作業手順や品質基準を整理し、現場を巻き込んで進めることで、導入後のスムーズな運用ができています。
※※ロボットSIer(エスアイアー)……ロボットを使った自動化システムの導入提案、設計、構築、保守などを行う専門業者。
人の力を活用するために
-現場を見ていて、共通して感じる課題はありますか。
さまざまな企業を訪問するなかで、製造現場全般に共通するのが人手不足です。特に金属加工やプレス加工、表面処理といった分野では、受注はあるのに人が集まらないという声をよく聞きます。
もちろん、職人の技術が必要な仕事や、人だからこそできる仕事もあります。ただ、単純作業や負荷の大きい作業をロボットに任せることで、顧客対応や品質管理など、より付加価値の高い仕事に集中できるようになります。
-人とロボットが役割を分担する時代になってきているのですね。
そう思います。人を減らすためではなく、人の力を生かすためにロボットを使う。かつてNC旋盤が普及したとき、職人たちは「自分の技術をより広範囲に、効率的に生かすための道具」として使いこなしてきました。ロボットも同じように、新しい道具として活用していく発想が大切です。
-最後に、「ハマロボ展2026」の見どころを教えてください。
まずは実機を見られることですね。カタログだけでは分からない大きさや動きを体感でき、導入後のイメージも具体的に描けます。
出展企業や専門家と話せることも魅力です。導入を具体的に考えている企業はもちろん、「まず何ができるのかを知りたい」という段階の方にも、ぜひ足を運んでいただきたいですね。
詳細については、下記公式サイトをご確認ください▼
10/15(木)・16(金)開催 ハマロボ展2026 公式サイト
静岡県AI・IoT導入診断アドバイザー
静岡県ロボット技術アドバイザー
株式会社Japan IT Produce
長谷川徹 代表取締役
産業用ロボットメーカー勤務を経て独立。IT・IoT・AI・ロボット導入による現場改善を支援し、これまでに静岡県内520社以上の相談に対応。経済産業省による「ロボット導入の手引き」の策定に携わるなど、ロボット活用の普及に取り組んでいる。
静岡市葵区御幸町
HP:Japan IT Produce