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カスタマーハラスメントに関するアンケート結果

2026年10月01日

■ 1. 調査結果サマリー

データから見えてきた「3つの重要な傾向」

2026年10月から予定されているカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)対策の法義務化を見据え、浜松商工会議所会員事業所156社を対象に実態調査を実施いたしました。その結果、過去を含めて約6割(63.5%・99社)の事業所がカスハラを経験しているという実態が明らかになりました。

会員事業所の皆様が今後の対策を考えていく上で、特に着目したい「3つの重要な傾向」が見えてきました。

(1)「過去に経験があっても、現在は対策を見合わせている」実情

現在対策を実施している企業の多くは、月1回や年数回など定期的にトラブルに直面されている事業所です。一方で、過去に被害を経験した事業所であっても、現在は落ち着いていることから半数以上(51.4%)が特段の対策を行っていない実態が分かりました。日常業務に追われる中で後回しになりがちですが、不測のトラブルに備えて平時から小さな備えをしておくことが大切です。

(2)「BtoB(法人取引)」においても対応が求められる現実

カスハラは店頭での対面接客を中心に語られがちですが、法人間の取引(BtoB)においても、暴言や威圧的な言動、長時間の拘束・繰り返しのクレームといった悩みが寄せられています。取引関係への配慮から担当者一人で抱え込んでしまいやすいため、組織として守る姿勢が求められています。

(3)リソースが限られる小規模事業者への支援の必要性

大企業の7割以上が対策に着手している一方、従業員20人以下の小規模事業者では6割超(63.4%)が未着手の状況にあります。「日々の業務で手一杯」「専門のマニュアルを作るノウハウがない」という切実な声が多く、小規模な事業所でも無理なく導入できる仕組みづくりが今後の大きな鍵となります。

 

■ 2. 調査概要

●対象: 浜松商工会議所 会員事業所
●調査期間: 2026年7月7日(火)〜 7月12日(日)
●調査方法: メール配信によるオンラインアンケート調査
●有効回答数: 156名(ユニーク回答者数基準)
●回答企業の内訳

【2026年10月法制化の背景】
労働施策総合推進法等の改正に伴い、企業に対してカスタマーハラスメント防止のための雇用管理上の措置(基本方針の明確化、相談窓口の設置、被害発生時の対応フロー整備等)が義務付けられます。

 

■ 3. 質問別単純集計

Q1. カスハラの有無 (サンプルサイズ:n=156)

「過去を含め発生あり(選択肢1〜4の合計)」と回答した事業所は全体の63.5%(99社)にのぼり、半数以上の企業で何らかの経験があることが分かります。

Q2. カスハラの主な内容 (サンプルサイズ:n=99、※過去を含め発生経験のある企業が対象)

「暴言・威圧的な言動」が約8割(79.8%)と突出して多く、次いで「長時間の拘束・繰り返しのクレーム」(41.4%)が続いており、現場の精神的・時間的負担が大きい行為が上位を占めています。

Q3. カスハラ対策の状況(サンプルサイズ:n=156)

「必要性は感じているが未対応」(35.3%)が最多となっており、対策の重要性を認識しつつも具体的な着手に至っていない事業所の実情がうかがえます。

Q3'. カスハラ対策の状況(再分類集計)(サンプルサイズ:n=156)

全体の過半数(56.4%)が「対策していない」状況にある一方、「対策中(準備中含む)」も4割を超えており、事業所間での取り組み状況に二極化が見られます。

 

■ 4. 現場の課題に迫るクロス集計・分析

【発見1】 過去に被害があった企業の約半数は、現在対策を見合わせている実態

集計データ:Q1発生頻度[行] × Q3'対策の有無[列](サンプルサイズ:n=156)

発生頻度と対策の状況を掛け合わせると、「たまにある(月1回程度)」の企業の57.1%、「まれにある(年に数回程度)」の48.8%が対策を進めており、直近でトラブルを経験している企業ほど意識が高まっていることが分かります。

一方で、「過去にあったが現在はない」と回答された35社の中では、過半数の51.4%(18社)が現在は対策を見合わせている状況にあります。問題が落ち着くと対策の優先順位が下がってしまうのは自然なことですが、カスハラは予期せず発生することも少なくありません。日頃から社内での連絡体制などをシンプルに整えておくことが、いざという時の安心につながります。

 

【発見2】BtoB(法人取引)でも、暴言や過度な要求への対応が課題に

集計データ:業種グループ&顧客接点方法 × Q2カスハラ内容(サンプルサイズ:n=99、複数回答)

業種や接点別の内容を見ると、BtoB企業において57件の回答があり、法人取引中心(1-2)で暴言・威圧が16件、長時間の拘束が5件と厳しい対応を迫られている点が注目されます。法人同士のお取引では、今後の関係性を重んじるあまり担当者が我慢を重ねてしまいがちです。BtoBであっても、理不尽な要求に対しては組織として適切な対応方針を共有しておくことが、大切な従業員を守ることにつながります。

一方BtoC企業については、対面接客(2-1)において、BtoB企業と同様、暴言・威圧・長時間の拘束が上位を占めた他、SNSでの誹謗中傷(10件)や責任者の呼び出し(6件)が他の業種グループと比べて多いのが特徴となっています。接客現場の負担の大きさがうかがえます。

 

【発見3】規模による対策状況の差〜リソースが限られる小規模企業への支援の重要性~

 集計データ:従業員グループ × Q3対策状況(サンプルサイズ:n=156)

従業員規模別に見てみますと、大企業(301人以上)では72.8%が既に対策を進めているのに対し、小規模事業者(0〜20人)では「必要性は感じているが未対応」が40.2%にのぼり、未対策の事業所が63.4%を占めています。

小規模な事業者様ほど、専任の担当者を置く余裕がなく、マニュアル作成や機器導入にハードルを感じていらっしゃることが背景にあります。制度の義務化に向けて、小規模な現場でも負担なく取り入れられる具体的なひな形や相談支援が求められています。

 

■ 5. 現場の声

アンケートの自由回答には、現場で真摯に顧客対応に向き合っているからこそ生じる悩みや、工夫を重ねる企業の実例が寄せられました。主な声を5つの傾向にまとめてご紹介します。

(1)【取引関係・BtoBならではの配慮と悩み】

継続的な取引関係があるからこそ、強く言い出せずに苦慮されている様子が伝わります。

● 【製造業・101〜300人】
「とあるお取引先の対応が非常に厳しく、受注を断っていかないと社員の退職にもつながりかねず苦慮している。」

● 【その他・21〜50人】
「見積提示の際、先方の想定を超えていたため値引きを強く求められ、応じられないと答えると取引中止を示唆された。最終的に値引きした金額で提示し直さざるを得なかった。」

(2)【ネット・SNS・匿名でのご意見への対応】

顔の見えないネット上での書き込みは、対応に多くの時間と精神的負担がかかります。

● 【サービス業・0〜5人】
「ネット上の匿名の書き込みや誹謗中傷は、思いのほか精神的負担が大きいです。相談できる窓口や行政の支援があると心強いです。」

● 【小売業・0〜5人】
「SNSやGoogleのクチコミへの書き込みは、対面と異なり事実確認や対応に時間がかかってしまい、業務に影響が出て困っている。」

(3)【正当なクレームとの線引きへの戸惑い】

お客様のご要望とハラスメントの境界をどこに置くべきか、手探りの状況がうかがえます。

● 【サービス業・0〜5人】
「どこからがカスハラに該当するのか判断が難しい。自社の対応に不備がなかったかどうかも含めて悩むことが多い。」

● 【サービス業・0〜5人】
「線引きが明確でないため、現場のスタッフが判断に迷ってしまうことがある。」

(4)【体制づくりやコスト面での工夫と課題】

設備導入やマニュアル整備において、費用や手間の面で課題を感じています。

● 【サービス業・11〜20人】
「電話対応での負担を減らすため録音機器の導入を考えたが、費用面で即座には踏み切れず悩んでいる。」

● 【サービス業・0〜5人】
「小さなお店のため、トラブル時に一人で抱え込んでしまいがち。店頭に掲示できる統一のポスターなどがあると助かる。」

(5)【先行して取り組む企業の実践事例】

工夫を凝らして方針を明文化し、効果を実感されている事業所もあります。

● 【その他・301人以上】
「契約書の中にカスタマーハラスメントに関する方針を盛り込み、ホームページでも公開したところ、理不尽なトラブルは大きく減少した。」

● 【小売業・301人以上】
「マニュアルを整備し、状況によっては警察への相談もためらわない方針を社内で共有した。店長向けの講習や録音機器の整備を順次進めている。」

 

6.今後に向けた事業所での取り組みと相談窓口

2026年10月より企業のカスタマーハラスメント対策が義務化されました。この法制化は、単なる手続きにとどまらず、「従業員が安心して日々の業務に従事できる職場環境を整えること」を目的としています。

特別な設備投資や大がかりな規定作成を行わずとも、日常業務の中で段階的に進められる3つのステップがあります。

(1) 基本方針の共有 まずは「理不尽な言動に対しては組織として適切に対応する」という姿勢を社内で共有することから始まります。ホームページへの掲載や社内への掲示など、できる範囲で方針を明確にしておくことが未然防止につながります。

(2) 相談ルールと記録の習慣化 現場の担当者が一人で判断を抱え込まず、管理者へ速やかに報告・相談できる体制を整えます。また、電話メモや対応履歴を記録しておく習慣をつけることで、客観的な事実確認がスムーズになります。

(3) 外部窓口の把握 自社内での対応が困難なケースに備え、警察や専門家など外部へ相談できる窓口をあらかじめ確認しておくことが安心材料となります。

法制化を迎えた現在、「まだ準備が進んでいない」「何から手をつけるべきか迷っている」という事業所様も、自社の業務に合った形で少しずつ備えを進めていただくことが大切です。

なお、具体的な対応手順や事後対応などにつきましては、当商工会議所の会報誌10月号にて詳しく解説しておりますので、あわせてご活用ください。

また、浜松商工会議所では、具体的な対応方針の策定やトラブルへの対応に関する個別相談には、弁護士や社会保険労務士などの専門家を交えた定例相談のご利用をお勧めしています。また、万が一の係争やトラブル発生時の備えとしては、損害保険「業務災害補償プラン」への加入も選択肢のひとつです。当商工会議所の会員事業所であれば団体割引が適用されますので、費用を抑えてリスク管理を行うことが可能です。

安心して事業に取り組める環境づくりのため、ぜひ商工会議所の相談窓口や各種制度をご活用ください。

 

 

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