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4月号特集)地域資源を「体験価値」に活用 ”酒を育てる趣味”の提案

2026年04月01日

木と酒を掛け合わせて、新たな需要を掘り起こす

地域資源を「体験価値」に活用
“酒を育てる趣味”の提案

木材を用いて酒を自分好みに香り付けできるプロダクト「#酒ハック」を展開する酒ハックプロジェクト株式会社。独自加工を施した木製スティックを酒の中に入れることで、最短半日という短期間で熟成酒が完成する。 木材加工業での端材を利用した、新商品の開発と販売戦略について聞いた。

 

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代表の種石健一氏は、半導体関連企業などで品質保証や生産技術に携わっていたが、エンドユーザーの顔が見える仕事をしたいと2023年に独立。着目したのは、地元静岡の林業や家具産業。自身がお酒やキャンプを好きだったことも重なり、「木と酒を掛け合わせたら面白いのではないか」と発想した。

当初はヒノキやスギで木製の熟成ボトルを作る構想だったが、水漏れや加工コストの問題に直面する。高品質な無節材を使えば価格は1本3万円に跳ね上がり、間伐材活用という当初の狙いともずれてしまう。

そこで「ボトルを木で作るのではなく、木片を入れて熟成させればいい」と、発想を転換。家具製造の現場で発生する端材や余材を生かし、香りを引き立てるためにレーザーで焼き入れ加工を施したスティックを開発。さらに、木材と酒の接触面積を最適化することで、従来の樽の場合と比べて短期間での香り付けを可能にした。


▲一枚板のテーブルのための製材工程で生じる端材が「#酒ハック」へと姿を変える

 

浜松の技術力、広がる販路

加工を担うのは浜松の町工場だ。楽器産業が盛んな浜松には、木製 楽器の製造を通じて木工の技術力 が集積している。安定的な製造と 品質管理はもちろん、すぐに動け る範囲に協力会社があることのメ リットは大きい。

一方、木製スティックのパッキング作業は、就労継続支援事業所「ウイズ蜆塚」の視覚障がい者に委託。スティックには判別しやすいよう点字を刻印している。

「当初は福祉を前面に出すべきか迷いましたが、『それで仕事が増えるならありがたい』と言っていただき、背中を押されました。趣味性の高いプロダクトですが、ソーシャルグッドにつながればうれしいですね」と種石氏。

作り手は制作に夢中になるあまり、販売や発信を後回しにしがちだ。だからこそ商品を形にすることと同じくらい、届け方を設計することが重要だと考える。

需要の検証にはクラウドファンディングを活用。開始2分で目標を達成し、最終的に約3200人から4000万円以上の支援を集めた。現在はECサイトを中心に、百貨店や量販店、ウイスキーフェスティバルなどへの出展も通じて販路を広げている。

 

顧客と一緒に 体験価値を見出す

「#酒ハック」の商品の特徴は、顧客が単なる購入者にとどまらない点にもある。利用者の中には、自らガスバーナーで焼き具合を調整し、味わいの違いを探求する人もいるそうだ。

「よく“酒好きの自由研究”と言われます。お酒と木の無限の組み合わせを楽しんでくださるお客さまの声を商品開発に反映させています」。完成品を売って終わりではなく、顧客との対話によって商品が進化していく。

さらに近年は使用済みの酒樽の再利用にも取り組む。30年以上熟成に使われた樽材は、酒が染み込み、複雑な香りを宿している。これをスティックとして再生し新たな価値を付加する。

その取り組みは、「ものづくり」から一歩進んだ「体験デザイン」ともいえる。「人は物そのものよりも体験にお金を払う時代です。自分でお酒を育てるという遊びを提案して広めたい」と語る。

特徴的なのは、自らの情熱と市場の反応を行き来しながら事業を組み立てる姿勢だ。「作りたい」という思いだけでは続かない。顧客が本当に価値を感じているかを確かめ、その接点を探り続けることが欠かせないと言う。

最後に創業を目指す人へのメッセージを尋ねた。

「偉そうなことは言えませんが、迷ったらやってみること。ただし、作るだけで終わらせない。そこまで考えてこそ事業になるのだと思います」

 


酒ハックプロジェクト株式会社 種石健一 代表取締役CEO
「お客さまの楽しみ方から新しい商品が生まれるのも、この事業の面白さです。」

酒熟成キット「# 酒ハック」の企画・開発・販売を手掛ける。木材を酒に漬け込むことで、従来は数カ月から数年を要する香味を半日から数日で実現。デザイン性と社会的意義が評価され「2023 グッドデザインしずおか」金賞を受賞。また、天竜区のトンネルで樽熟成させるコーヒー事業も展開。
●浜松市中央区鍛冶町
HP:https://sakehack.com/

 

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