4月号特集)NPO法人を立ち上げた建設会社 地域課題への挑戦を競争力に
社会貢献で終わらせない地域との関係づくり
NPO法人を立ち上げた建設会社
地域課題への挑戦を競争力に
建設会社が米を作る。一見、本業とは無関係に思えるが、それは単なる地域活動の延長ではない。 NPO法人「地域環境と自然を愛する会」を設立し、地域と確かな信頼関係を築いてきた中村建設株式会社。社会貢献にとどまらず、地域とともに事業を形作る。その歩みが事業や働き方の広がりを生み出している。
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2005年にNPO法人を設立して以来、コアジサシのコロニー(集団繁殖地)の保護 活動や地域の清掃活動などを続けてきた。当時は、建設会社がボラ ンティア活動を行うことは珍しく、企業名の宣伝や営業目的ではないかと疑われることもあった時代。そのため中村建設は、地域活動を一過性で終わらせないために、NPOという形を選んだ。
転機となったのは、同社が手掛けた細江町の住宅団地「美咲台」だった。2001年に松浦真人氏が移住し、地域活動に参加したことで住民との関係が深まっていく。
地域の行事に参画することで関 係を築き、2008年には幼稚園・小学校・地域住民が連携する米作りがスタート。同時に小学校5年生の総合学習として米作りが採用され、田植え前には泥遊びイベントを開催。収穫した米は秋祭りの投げ餅や一般販売するなど、農作業は地域コミュニティー活動へと発展していった。
「地域の方からすると米作りはある意味、労働でしかない。でも見方を変えればみんなが楽しめるアトラクションになるのです」と、松浦氏は振り返る。
地域課題を事業の種に変える
2010年頃、地域で休耕田の増加が課題となった。管理が行き届かず耕作放棄地に転じる恐れのある土地をどう活用するか。その打開策として当NPOが土地を借り受け、米作りをすることになった。
普段はNPOのメンバーが管理し、田植えや稲刈りの時期には中村建設の社員や家族などが参加。開始当初は採算が取れなかったが、現在では、収穫した米は即日完売 するほどで、ビジネスとして成り立ちつつある。
米作りがもたらしたのは収益だけではない。一番のメリットは、人とのつながりだった。農作業を通じ、通常の実務では接点のない企業の役員やクリエイターなどと出会い、役職や業種を超えたフラットな関係が生まれた。
「お客さまではなく仲間として付き合える。私に言わせれば、究極の異業種交流ですね」。地域活動は同社にとってネットワークづくりの場にもなっているようだ。
▲地元の農業者と協力して生産したお米は、「中建の米(なかたけるのまい)」として販売
一次産業から広がる新しい働き方
地域活動で培ったネットワークは、新たな事業にも波及している。同社が日鉄エンジニアリングと連携して運営に関わる清掃工場「天竜エコテラス」(天竜区)では、一般ごみを約1800度の超高温で処理する過程で溶融スラグが生成される。スラグは砂状で無害化されており、これをエコサンドとして販売。ケイ酸分を多く含むため、米作りなど農作物の肥料として活用されている。
この取り組みは異業種との連携にも広がり、花の舞酒造では山田錦の栽培に導入。出来上がった日本酒は世界的なコンペティションで入賞を果たした。
中村建設では「新事業推進室」を設置し、一次産業での本格展開に乗り出した。これは新たな収益源としてだけでなく、建設業と組み合わせた柔軟な働き方を可能にする取り組みでもある。
「週の数日は建設業、残りの日は農業事業。体力に応じた働き方ができれば、年齢を重ねても無理なく働き続けられる。それが雇用の広がりにつながるのではないか」と同氏は語る。
積み重ねが育む競争力
建設業だけにとらわれない取り組みを続けてきた結果、「中村建設はユニークな会社」という認知が広まり、学生とのまちづくり連携なども増えている。ハードだけでなく、ソフトまで提案できる点は、競合他社との差別化にもつながっている。
直接的な利益はすぐには生まれない。それでも活動を続ける理由について、「営業と米作りは似ています。手間をかければかけただけ、いい成果につながるんです」と笑う。
地域に入り、関係を築き、資源を価値へと変える。その積み重ねが、人口減少社会における持続可能な企業のあり方を示している。
中村建設株式会社 松浦真人 常務取締役
「地域の課題を引き受ける。それが、やがて会社の力になると思います。」
1955 年創立。公共インフラの整備から建築、個人住宅の設計施工、環境 事業まで幅広く手掛ける総合建設会社。「環境のリーディングカンパニー」を目指し、NPO法人「地域環境と自然を愛する会」と連携した道路清掃、 災害時における支援などを行う。一連の活動は、浜松市CSR活動表彰を受賞。
●浜松市中央区中沢町
HP:https://www.nakaken.co.jp/