第26期正副会頭インタビュー/斉藤会頭(1・2月合併号特集)
会頭 斉藤 薫 (さいとうかおる)
遠州鉄道株式会社 相談役
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激動の時代に問われる「対応力」
伴走支援を徹底し浜松の産業の未来を切り拓く
経済環境が目まぐるしく変化する中、浜松商工会議所第26期執行部がスタートを切った。 不透明感が漂う時代にこそ求められる商工会議所の役割とは何か。人材確保、行政要望、DX推進という3つの重点施策を軸に、企業支援を通じて地域経済の舵取りに挑む斉藤薫会頭に今期の展望と会員へのメッセージを聞いた。
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トランプ関税政策の不透明性、物価高、新政権の経済政策──昨年を振り返ると、絶えず状況が動いていたというのが率直な感想です。特にトランプ氏の政策は予測がつかず、メーカーの皆さんは対応に苦慮されたのではないでしょうか。
高市政権下で政治的課題が解決されていくことに期待する反面、台湾有事をめぐる発言のように、首相の発言一つで経済情勢が揺らぐリスクも懸念されます。不透明な時代ではありますが、こうした激動期にこそ企業の真価が問われ、新たな可能性が開けるものです。そのためにも、国の支援策だけでなく地域の実情に即した支援を商工会議所が担っていかなければならないと考えています。
若手人材確保への多面的アプローチ
当所の支援において近年最も力を入れてきたのが、将来を見据えた人材確保です。定時制高校や外国人高校との人材採用マッチング事業が模範的として日本商工会議所の事業活動表彰を受けたことは、浜松工業高校を中心とした画期的な取り組みが評価された証しです。
マッチング事業は現在、浜名高校などを加えた定時制高校と、外国人高校のムンド・デ・アレグリア学校の全6校で実施しています。
これは人手不足や早期離職問題への対応策にとどまりません。日系外国人の若者たちが、派遣雇用などの不安定な就労ではなく、正規社員として生活設計を立てられるようにする。社会貢献としての価値も高い取り組みです。会員企業の皆さんには、ぜひこのマッチング事業を積極的に活用して、地域の人材育成にご協力いただきたいと思います。
2024年度からスタートした職場体験「ジョブキャンプ」も、想定していた以上の反響をいただき、企業側のニーズに対応しきれないほどです。高校生に自社を知ってもらい、大学進学後もUターン就職の選択肢として覚えていてもらう。そうした戦略的な採用活動が広がっています。
さらに、2026年度には就職・進学問わず高校生向けに合同企業説明会を開催します。2025年度事業規模の3倍以上に相当する、450社・4800人規模の高校生との「出会いの場」の提供を目指します。人材確保のためには、今後もこうして若者との接点を複数用意し、反応を見極めていく必要があると考えています。
AI時代における産業構造の変化
昨今の世界的な潮流として見逃せないのが、AI技術の急速な進化です。アメリカや中国では、ソフトウェア系の求人が激減し、配管工や電気工といった実業を学ぶ学校への入学者が増えています。AIには代替できない技術を持つエッセンシャルワーカーの価値が、医師と同等の給与水準に近づいているという分析もあります。
浜松にはメーカーが多く、まさに「AIに代替されにくい仕事」が豊富にあります。しかし、多くの学生はソフト系の仕事を求めて都会に出てしまう。この潮流を変えていくことが重要です。例えば、都会ではマンション価格が高騰し、50年ローンという厳しい生活設計を強いられる現実があります。浜松で働き、心豊かな生活を送る選択肢があることを、若い世代にしっかり伝えていくことも私たちの役割だと思います。
中小・小規模企業の経営者の皆さんは、日々の業務で忙しく、世界的な動向に目を向ける余裕がないかもしれません。だからこそ、商工会議所が信頼できる情報源を選別し、正しい情報を伝えていく役割が重要だと考えています。
会員の皆さんの声を浜松市行政に
当所では昨年度の新たな取り組みとして、浜松市への行政要望を行い、中野市長に12件の要望を提出しました。実は、各部会から上がってきた案件はもっと多かったのですが、その要望が市・県・国のどの管轄なのか、会員間の利害調整は必要かといった整理を重ねて12件に絞り込みました。
小規模企業、個人店の経営者の皆さんには、行政に直接働き掛ける時間や機会がありません。だからこそ、会議所が皆さんのニーズや意見を吸い上げ、行政に届ける。これは商工会議所がなすべき基本的な役割の一つです。
もちろん要望を出すだけでなく、実現に向けた働き掛けも継続していきます。実際に新野球場建設や医大・静大の再編といった案件では、シンポジウムの開催など気運を高める取り組みを進めています。
構想から実装へ本質的DX支援を追求
DX経営塾は来期で5年目を迎えます。デジタル化支援というと技術指導を想像されるかもしれませんが、私たちが重視しているのは経営者の頭の中を整理することです。まず将来の事業構想を描き、そのために必要なデジタル化を考えることが重要です。
小さな会社ほど、経営者も従業員も日々の業務に追われています。しかし、生産性を上げて時間を生み出さなければ、視察や学びの機会を持つこともできません。DXは単なる効率化ではなく、経営者が未来を考える時間を創出するための手段です。DX経営塾の卒業生が講師として事例を発表する機会も生まれ、地域での学び合いが進んでいます。
業界団体との連携で的確な支援を実践
国や県の支援策と、地域の実際のニーズには、しばしばギャップがあります。中小・小規模企業にとって本当に必要な支援は何か。その声をしっかりと吸い上げるこ とが重要であり、業界団体との連携を深めることをアイデアの一つとして考えています。現場の小さな声にこそ、本質的な課題が隠れているものです。私たちはそれを逃さず、より的確な支援へとつなげていきます。
そして、どこへ行けばいいか分からないとき、「会議所なら何か分かるかもしれない」と頼ってもらえる存在であり続けたい。それが私の願いです。そのために、今後も「伴走する」という姿勢で、会員の皆さんの事業継続と発展を支援していきます。
激動の時代だからこそ、商工会議所と会員企業がお互いに助け合いながら進んでいくことが大切です。会員の皆さんの期待に応えるべく、職員一同、より密接な関係性を築いていきたいと考えています。共に考え、共に前進していきましょう。本年もどうぞよろしくお願いいたします。(談)
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会頭 斉藤 薫
遠州鉄道株式会社 相談役
1952年島田市生まれ。1976年遠州鉄道株式会社入社。2013年代表取締役社長、2022年同会長に就任。2024年に退任し相談役となる。また、2019年浜松商工会議所副会頭、2021年に会頭に就任。座右の銘は「備えよ常に」。40年近く前から始めた水泳は現在も継続中で体力維持に努める。