8・9月号 特集3)老舗ガス会社による地域への恩返し 窒素を用いた大興奮サイエンスショー(株式会社丸協酸素商会)
ビジネスマッチングフェアで披露した実験を地域貢献活動へと発展させる
老舗ガス会社による地域への恩返し
窒素を用いた大興奮サイエンスショー
昨年100周年を迎えた丸協酸素商会は、CSRの一環で小学校での出張サイエンスショーを行っている。
多彩な実験を通してガスの面白さを伝えることで、子どもたちの知的好奇心を刺激し、教育現場から高い評価を得ている。
「地域への感謝の気持ちを胸に取り組んできた」と話す、同社の活動の軌跡と今後の展望を取材した。
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大正13年に創業して以来、自動車産業や建築、医療、農業など多岐にわたる分野へ高圧ガスを供給してきた株式会社丸協酸素商会。この老舗企業が、10年ほど前から始めたユニークなCSR活動で注目を集めている。それは、ガスを使ったサイエンスショーだ。
サイエンスショーのきっかけは、あるビジネスマッチングフェアに出展した際の経験にあると、総務部長の野末雄己氏は振り返る。
「ガスは、さまざまな事業において必要不可欠な存在ではあるものの、目に見えないため認知度が低い。展示会で、この“縁の下の力持ち”の価値をいかに伝えようか考えていたときにひらめいたのが、液体窒素を用いた実験でした。さっそく実行に移してみたところ、予想以上に好評だったんです」
この企画を発展させれば、地域の方々に楽しんでもらえるイベントになるかもしれない――。そう考えた同社は、主なターゲットを子どもとし、教育委員会や小学校へ提案しに回る。さらに企業のCSR活動を取りまとめる団体経由でも依頼を受けられるようにするなど、積極的なアプローチを展開。その結果、徐々にオファーが舞い込むようになり、今では年間20講演を実施するまでになった。
考え、触れる体験を通じてガスの面白さを共有する
サイエンスショーは、液体窒素の温度測定から始まり、風船や生花、火のついた花火を液体窒素に入れる実験、液体窒素で雲をつくる実験など、多様なコンテンツで構成。「ガスの知識や使用用途を紹介しながらも、座学の時間が長くならないように工夫しています」と話すのは、サイエンスショーの講師を担当する山瀬進哉氏。
「『これを液体窒素に入れたらどうなると思う?』『なぜ凍ってしまったのだろう?』などと問いかけながらクイズ形式で進めたり、液体窒素に入れた物に触れてもらったりと、子どもたちが退屈しないように、またガスをより身近に感じてもらえるように意識しています。みんなが大興奮している姿は、僕がこの活動に取り組むモチベーションになっています」
学校からは「授業では行えない実験を間近で体感できるまたとない機会」と高く評価されている。さらに、企業との接点が少ない子どもたちにとって、それ自体が貴重な体験として喜ばれている。
▲実験の様子。液体窒素に入れた風船や生花の変化を間近で体感できる
CSR活動によって築けた地域との新しい結び付き
同社は事業の性質上、一般消費者に認知されづらい企業だった。しかし、サイエンスショーの実施、さらに新聞などで取り上げられることで、その社名は確実に広がっている。
一方で「知名度向上は副産物に過ぎず、あくまでも地域に貢献するための活動」と代表取締役社長の武藤菊代氏は語る。
「弊社は昨年、おかげさまで100周年を迎えました。長く事業を続けられているのは、ひとえに地域の皆さまのおかげであり、そんな感謝の気持ちを形にしようと始めたのが、サイエンスショーなのです。この活動を通じて小学校や他企業とのご縁を頂けたことは、私たちにとって大きな財産。今後、さらに互いの連携を深め、ガスという枠を超えた新しい地域貢献の可能性を、皆さまと共に探っていけたらと考えています」
現在、小学校だけでなく、病院での高齢者に向けたサイエンスショーの開催も予定しているという。さらなる広がりを見せる同社のCSR活動は、地域との絆を深める確かな基盤となっている。
株式会社丸協酸素商会
武藤菊代 代表取締役社長(右)
野末雄己 取締役 総務部長(左)
山瀬進哉 総務部 講師担当(中)
1924年創業。主事業である産業高圧ガスの製造・販売のほか、溶接材料・ 機械や工作機械の導入提案、産業用工具の販売を行う。また、CSR活動と して小学校にてガスの面白さを伝えるサイエンスショーを開催。その取り組 みが評価され、「平成30年度浜松市企業のCSR活動表彰」ソーシャル活動 部門優秀賞に輝く。また、文部科学省主催「青少年の体験活動推進企業表彰」 にて審査委員会優秀賞(2020年)、審査委員会奨励賞(2021年)を受賞。
●浜松市中央区中田町
HP:https://www.marukyosanso.co.jp/