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特集3)株式会社鳥善

2025年04月01日

150余年一貫して食に特化しながら、新たな事業領域を常に開拓

時流を見極めて事業を変革 食を通じて特別な時間を演出

鳥料理店として創業し、時代に即した業態へと変化しながら150年の歴史をつないできた鳥善。6代目の代表を務める伊達善隆氏も、現在のブライダル・レストラン事業を柱としながら組織や事業を刷新。今後はストック型の“toBビジネス”を成長させていくことで、事業のポートフォリオのバランスを取っていく。

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佐鳴湖を望む丘の上に、2000坪の敷地に広がるリゾート型結婚式場&レストランがある。株式会社鳥善が営む「ジ・オリエンタルテラス」だ。「鳥善の事業は変革の連続です」と語る6代目代表伊達善隆氏からその歴史を聞いた。
創業は明治元年、現在の鍛冶町に鳥料理店として開店。2代目が店を広げたが、3代目の頃に戦争で事業は一旦中断。4代目の時に佐鳴台へ移転し料亭旅館へと業態を変えた。「当時この辺りは道がようやくできたくらい。未開発エリアの発展を見込んでの決断だったと思います」
さらなる転機は5代目の就任後。時代の変化に伴い料亭旅館の需要が下火になると、神殿を構え、神前挙式ができる披露宴会場に業態転換。ホテルウエディングが主流の時代に和婚スタイルで人気を博す。その後、邸宅ウエディングブームが到来すると、バリ島リゾートを彷彿させる「ジ・オリエンタルテラス」へとリブランディングを果たした。


▲創業時は鶏の味噌鍋が名物の鳥料理店として営業。当時は鍛冶町に店を構えていた

 

もどかしい時期を乗り越えて

伝統にとらわれず、変わり続ける――。それが同社のDNAなのかもしれない。
「フレンチに転換したことでいろいろと周囲から批判もあったようです。しかし、5代目は料理屋として人をもてなす美意識を持ちながら、時代に即した形へ変化させたのだと思います」そう語る善隆氏は2014年、鳥善に入社する。
「こだわりを貫く姿勢は先代から学んだもの。食を通じた豊かさの提供という軸に、私は街を活性化させるという理想を加えました。浜松が元気になれば、鳥善の価値も上がると信じています」
しかし入社直後、大きな壁にぶつかった。「リブランディングがなされたものの、当時の業績は良好とは言い難く、建物のポテンシャルも生かしきれていませんでした」。そこで、善隆氏はお客さまへの挨拶やブライダルの打ち合わせの仕方など業務全般を見直した。
ところが若い後継者の新しいやり方や、仕事に求めた姿勢に、以前からいた従業員は戸惑った。ギャップに対応できず、当時いた50人中49人が辞めていく苦しい状況に。一方で、自身の信念に共感する人材を採用し、組織の成熟に伴ってサービスの質と業績が向上していく。そして結果が見え始めた2019年、代表に就任した。

 

コロナ禍でミッションの重要性を認識

直後の2020年、コロナの直撃を受けて結婚式は全て延期に。緊急事態宣言が発令された4月単月で数千万円の赤字を出す事態に陥った。市の休業要請で一旦営業を停止したが、こんな時こそレストランの価値を提供すべきと思い直し営業を再開する。
事前の告知はせず、感謝の印として20%オフなどの施策を重ねた結果、口コミで話題になり業績は回復。同年のレストラン売上額は過去最高を記録した。“自分たちの仕事は何のためにあるのか”。事業の存在意義に従うことが業績につながる経験をした。
また、休業中に人材育成とデジタル化などの業務改善に注力。現場に運営を委ねられる自律性が生まれた。「ボトムアップ型組織へ進化し、式場・レストラン運営は社員に任せて、私は新規事業開発に注力するようになりました」

 

収益性向上のための新事業

ブライダル市場の縮小を見据え、地域活性化プロジェクトに携わったり、地元企業のニーズに触れる中で新事業創出の種を探った。こうしたことから生まれたのが、スズキ株式会社と協業するインドベジタリアン料理のミールキットだ。
「外国人従業員を招き入れる際、課題になるのが食事です。そこで、平日は稼働しない婚礼厨房設備を利用してベジタリアンフードを調理。冷凍したものを提携先の社食に卸しています」。これを事業の新たな柱に育てようとしている。
「ブライダルもレストランも季節的な変動や有事に弱く、経営上のリスクが大きい。そのデメリットを補完するため、今後も食のストック型ビジネスを拡充する予定です」。150年を超えた会社の歴史は、これからも新しい展開を見せていく。

 

株式会社 鳥善
6代目伊達善隆代表取締役

1868年に鳥料理店として創業。現在は、結婚式場およびレストラン運営、弁当製造販売を事業の柱とする。6代目の善隆氏は1985年生まれ。早稲田大学卒業後、PwCに入社して大企業のコンサルティングを経験。その後、Plan・Do・Seeに転職し店舗マネジメントや老舗料亭旅館の再生を手掛ける。2014年に株式会社鳥善に入社、2019年に代表取締役に就任。ブライダル・レストラン事業の業務改善を進め、地方創生やミールキット開発事業も展開。株式会社ル・グラン・ミラージュ代表取締役、株式会社HACK共同創業者。
●浜松市中央区佐鳴台
HP:https://torizen.co.jp/

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