お知らせ

お知らせ

特集1)株式会社村松製油所

2025年04月01日

「コロナ禍」というピンチを新規事業立ち上げのチャンスに

地域との接点を増やし認知を広げ、応援と共感を得る

今でこそ、直売所やレストランなど一般消費者向けの事業を展開し、地元民からの認知度が高い村松製油所だが、意外にもほんの数年前までは、完全なBtoB企業だった。なぜ、100年以上貫いてきた体制を変えるに至ったのか。その背景には、企業存続の危機と、老舗の看板と従業員を守らんとする5代目の戦略があった。

 

ーーーーー

代々受け継がれた搾油機でつくる香り高いごま油で、飲食店から個人客まで多くのファンから支持される浜松唯一の油屋、村松製油所。近年は「後継者不在」に悩まされていたが、縁をたどり外部から人材を確保することで、事業承継を成功させた。
5代目のバトンを受け取ったのは、木下伸弥氏。元自動車メーカーのシステムエンジニアという異色の経歴の持ち主が、現在は油屋の看板店主として同社を力強くリードしている。


▲白いラベルが以前の、赤いラベルが現在の一般客向け商品。容器からサイズ、ラベルまで様変わり

来店・購入につながる仕掛け

現在、村松製油所の販売先の構成は、企業が7割、一般消費者が3割となっている。しかし木下氏が入社した2018年時点では、実は99%を企業が占めていた。いかに同氏が個人客へのアプローチに力を入れてきたかが分かるだろう。
事業を見直す転機となったのは新型コロナウイルス感染症の拡大だった。油の販売先である飲食店が営業停止を余儀なくされ発注がストップ。その結果、同社は数カ月間全く仕事がない期間が続き、事業継続への危機感が日に日に大きくなっていった。
そんな状況を打破するために木下氏が打った施策こそが、「一般消費者向けの販売」だった。
「一般のお客さまに対してであれば、自分たちでできることがあると考えました。しかし、地域に認知されていない油屋が、突然ごま油の直売所をつくっても集客できないことは明らか。その課題を解決するために必要だったのが、レストランの併設だったのです」
“おいしいごはん屋”をつくれば人が集まるし、自社のごま油を使った料理でその魅力をダイレクトに伝えられ、物販にもつなげられる。また、テイクアウトできるランチ営業にすることで、たとえコロナ禍であっても集客が見込めるはず――。
そんな木下氏の提案に、最初はほとんどの従業員が反対。しかし、友人である藤田隼介シェフの協力を取り付けたことで風向きが変わり、2021年にリノベーションした母屋にて直売所とレストラン「古民家キッチン ゑふすたいる」をオープンさせた。
その翌年には蔵を改築して厨房と工房を開設。浜松産のハバネロやハラペーニョを使った辣油、「もっと辛い辣油を!」という顧客の声から誕生した『どがらいラー』など、“飽きさせない”新商品開発にも余念がない。

▲同社敷地内にあった古民家をリノベーションし、オープンさせた直売所&レストラン「ゑふすたいる」。レストランで油の魅力を味わった客が、直売所で油を買って帰る動線を意識したつくりに

知ってもらう機会を逃さない

一般消費者向けの事業と合わせて木下氏が注力したのが「パブリシティー」だ。新たな試みを始めるたびに、その過程から結果までを段階的にプレスリリースで発信し、メディアでの露出を狙った。
地道な広報活動が功を奏し、同社の取り組みはテレビ番組や新聞でたびたび取り上げられるように。そして、それを見た人が店舗を訪れたりECサイトで買い物したりする中でファンになる、という好循環が生まれている。
「村松製油所の看板を長く掲げ続けるためには、まずわれわれの存在を知ってもらわないことには始まりません。これからも地域の方々との接点を築く機会を積極的につくっていきたいです」と木下氏。周りの人を巻き込み、ときに自発的に巻き込まれながら、老舗油屋の可能性はまだまだ大きく花開きそうだ。

 

 

株式会社 村松製油所
5代目 木下伸弥代表取締役

1872年創業。ごま油をはじめとする食用油の製造・販売のほか、同社敷地内のレストラン「古民家キッチン ゑふすたいる」では、自社の油と地元の食材を用いた料理を提供する。木下氏は2018年に同社に入り、2021年に代表取締役に就任。オイスカ浜松国際高等学校と取り組む「浜松産ごま育成プロジェクト」など地域協働活動にも積極的に参画。こうした姿勢が評価され、令和6年度「ふじのくに食の都づくり貢献賞」受賞。
●浜松市中央区湖東町
HP:https://www.kaneta1872.jp/wp/

一覧に戻る
アクセス
入会案内
貸会議室申込
来所予約
お問合せ