お知らせ

その他

特集2)トリイ食品株式会社

2025年03月01日

創業101年目を迎えた中小食品メーカーのパブリシティ戦略

自社情報をメディアが求める価値に変換「信頼×独自性」で地道にアピール

大正13年創業の鳥居食品株式会社は、記者発表を主体としたパブリシティ活動を行っている。地域の老舗企業としてのブランド力を生かしつつ、折に触れて新商品を発表するなど、独自性を高めてきた。予算をかけなくても「メディアが求める付加価値のある情報」を提供することで、広報の成果につなげている。

パブリシティ:自社の製品や事業に関する発表をしたり、取材に応じたりすることでマスコミ媒体に無料で取り上げてもらう活動のこと。

ーーーーー

地元で長年、ソースや食酢を製造してきた鳥居食品。同社では年に1~2回、新商品の発売に合わせて当商工会議所会館の経済記者クラブに出向いて記者発表を行い、地元の新聞やテレビに取り上げてもらうパブリシティを活用している。

「広報に多額の費用をかけられない小さな企業だからこそ、時間をかけて記事の掲載実績を積むことが重要です」と語るのは、代表取締役社長の鳥居大資氏。

同社は20年ほど前まで業務用ソースが売上高の大半を占めていたが、取引先企業の社員食堂運営が外部委託されるようになり需要が減少。家庭用ソースの製造・販売にシフトするにあたり、広報の必要性が高まった。

2005年に3代目社長に就任した鳥居氏は、広報については専門外。そこで、当商工会議所青年部が開催したメディア活用の勉強会に参加し、プレスリリースの作成方法や基本的な広報の考え方を教わった。

「大切なのは自社や商品の宣伝をするのではなく、それが地域や社会にどのような価値をもたらすかを伝えること。地元の野菜を使った新商品なら、地産地消をうたうだけでなく、規格外野菜の活用で農家の収入増につなげたり、カーボンオフセットに貢献したりといった、価値の言い換えが効果的です」

特に新聞は事実や論理を重視するため、具体的なデータや裏付けを用意することで、同社の地元新聞での掲載が増えていった。

番組制作会社の意向をくみ珍しい二段熟成製法を考案

東京のテレビ局から問い合わせが来たのも、地元新聞での記事掲載の実績があったからだと鳥居氏は分析する。

ただ、テレビ番組では取材ネタの独自性(面白さ)が重視される点が新聞と大きく異なると続ける。木桶で作るソースは他社にも存在したため、日本で唯一と思われる二段熟成製法を取り入れた。

「製造の手間は増えますが、60℃の低温で野菜やハーブのうま味をじっくり引き出せるメリットもあり、職人を説得して実現させました」

テレビが好む独自性を実現した結果、全国放送にも取り上げられるように。その影響で東京の高級スーパーや輸入雑貨店などでも取り扱いが決まった。また、浜松の人々が東京のこれらの店舗でトリイソースを見かけることでブランド価値が高まるという思わぬ効果も生まれた。

「メディアの視点を意識して商品を見直すことで、商品開発や販促方法のヒントを得られることは多いと思います。広報活動は、時間はかかっても地道に取り組めば次第に信頼が高まり、取り上げてくれるメディアも増えて、やがて大きな効果を生みます。広報は宣伝をしない営業活動と言えるかもしれません」

ファンを増やす口コミの力

消費者との関係を深めファンを増やす取り組みとして、10年ほど前から工場見学をスタートさせた。

「工場見学の一番の魅力は、匂いです。特に野菜を煮込む香りはインパクトがあり、見学に来てくださった方は必ずファンになってくれます」と力説する鳥居氏。

見学者がその感動をSNSで発信することで、ファンの輪がさらに広がっていく。知り合いの「いいね」の信用力は、企業が発信するSNSをはるかに超える。

工場見学では製造スタッフが案内役を兼任。見学者の喜びや驚きを間近に見ることで、仕事のやりがいに気づき、モチベーションアップにもつながっている。

9年前には直売所を開設。この秋にはトリイソースを使った食堂をオープンさせ、「見る・食べる・買う」という流れが生まれる。

「売りに行くのではなく、来てもらう仕掛けづくりに力を入れています。観光客が某ハンバーグを目当てに静岡を訪れるように、トリイソースを目的に来てくれる人が増えたらうれしいですね」と夢を語る鳥居氏。

自社の強みを分析し、それをメディアが求める価値に変換することで、これまで多くのパブリシティを獲得した鳥居食品は、今後も多くのファンを生み出していくことだろう。


▲野菜を煮込む香りに包まれながら、職人によるソースづくりの各工程を間近で見られる工場見学は、常に予約で満席。事務所2階ではソースの試食もできる


▲倉庫をリノベーションした直売所。ウスターソース、焼きそばセットなど約20種類を販売するほか、ソースの量り売りにも対応

 

鳥居食品 株式会社
鳥居大資代表取締役社長

1924年創業の100年企業。添加物を使わず、野菜を丸ごと低温加熱し、自社醸造酢を加え木桶で約1カ月熟成するなど、手間を惜しまないソースで顧客を獲得。地元企業とのコラボ商品も人気で、お菓子やスーパーの総菜として展開。この秋には「トリイソース食堂」をオープン。海外事業も視野に入れる。従業員数19人。

● 浜松市中央区相生町

関連ページ:トリイソース

 

 

一覧に戻る
アクセス
入会案内
貸会議室申込
来所予約
お問合せ