特集1)常盤工業株式会社
情報を発信することで、共感を得て地域とつながる
自社の魅力を棚卸しすると「伝えたい内容」が見えてくる
常盤工業株式会社は、企業や自治体を顧客とする建築土木案件から、一般住宅の施工まで手掛ける総合建設会社。近年、SDGsを軸に地域社会への貢献活動を展開し、既存メディアやウェブを通して積極的に取り組みを発信している。メディアに対する際の心掛け、発信内容の見つけ方など、広報活動を進めていくうえでのポイントを聞いた。
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来年で創業100年を迎える常盤工業。同社の広報活動は、2018年から本格的に始まった。プレスリリースをはじめ、環境教育やイベント開催などその活動は幅広い。
広報活動の意義として、自社はもちろん業界全体の認知度アップやイメージアップが挙げられる、と経営基幹部の部長、髙橋脩夫氏は言う。
「直接の顧客は企業や自治体であっても、建築物を実際に利用する地域の方々含めて大切な“お客さま”です。地域の方々には工事でご迷惑をかけることも多々ありますが、広報を通じて仕事内容や活動内容を知っていただき、この仕事の価値についてもご理解いただけたらと思っています」
メディア担当者との信頼関係を育てる
同社ではプレスリリースを積極的に配信している。内容は各種表彰や認証の報告、社屋で行うイベントのお知らせなどが中心。リリースを作る際には、どうしたら関心を持ってもらえるか、掲載してもらえるかを考えて一工夫している。
「例えば単に“社屋が賞を取りました”という内容だけでは報告に過ぎず記事にしにくいと思います。ですから、記者さんが社屋を見学できる機会を設けるとか、夏休みなら子ども向けの見学会を開催するとか、取り上げてもらいやすいアイデアを加えるように心掛けています」と髙橋氏。
取材時には分かりやすく正確に伝えるよう心掛け、原稿確認の際は迅速に対応。このような積み重ねでメディア関係者との信頼関係を築いてきた。
メディアに載る回数が多くなるにつれ、社員が記事を目にしたり、顧客から「テレビに出ていたね」と言われたりする機会が増え、広報の効果が社内でも認知されてきた。社外に向けたプレスリリースは、結果的に社内のモチベーションアップにつながっている。
▲社屋がある「ときはまスクエア」にて毎年開催される「ときはまフェス」。ステージイベントやマルシェなどを目当てに多くの人が訪れる
SDGsへの真剣な取り組み
同社はSDGs(持続可能な開発目標)にも力を入れている。SDGsが話題になり始めた2018年ごろ、髙橋氏はその内容が建設業界、さらには自社の経営理念との親和性が高いと判断。積極的に取り組んでいくことを決めた。
まずは自身で「SDGs for School認定エデュケーター」の資格を取得。市内の学校や企業に向けてのワークショップ講師として活動する一方、社員には1年を通じて社内教育を行いSDGsへの理解を深めてもらった。
これらの取り組みをホームページで紹介し、リリース発表することで、メディアを通して“常盤工業=SDGs”と認知されるように。同じ時期にゼロエネルギービル(ZEB)の新社屋が完成したこともあり、サステナブル企業というイメージも定着した。
「SDGsを取り入れたのはブームと重なったタイミングでしたが、流れに乗ったわけではありません。SDGsの考え方がわが社の経営理念とマッチしたからです」 ただ単に、はやっているから広報に使えそう、という理由だけで飛びついても結局は長続きしない。ベースとなる企業理念にSDGsの理念が合致したからこそ取り入れ、成功した好例といえるだろう。
▲髙橋氏が講師を務める小学生向けのSDGs講座。地域の子どもたちに、環境問題やまちづくりについて考えるきっかけを提供している
社内では当たり前のことがお宝ネタなことも
広報活動で大変だったり困ったりしたことはないのだろうか。
SNS担当の橋本成美氏は、「困るのは、取り上げるネタがないとき。でもそんなときは探しに出かけます!」と笑う。休憩時に他部署の人と話す際、気になる話題があればすぐに「見に行ってもいいですか」と取材につなげるそう。
「私は建設のことをほとんど知らずに入社したので、工事現場では目にするもの全てに興味津々。言ってみればネタの宝庫です。でも現場監督にとっては当たり前の風景らしく、『こんなのがネタになるの?』といつもけげん怪訝な顔をされます(笑)。そういう“社内の当たり前”を掘り起こして、建設業って面白いんだよ、常盤工業はこんなことをしているよ、というのをどんどん発信しています」
広報の第一歩は「自社の価値探し」から
自社の広報活動をする際、果たして何から手を付けるべきだろうか。例えばプレスリリースを作るにしても、何を発信したらいいか迷う人も多いだろう。
「無理やり真新しいネタを作る必要はありません。一度、自社の価値を棚卸ししてみてはいかがでしょう。自分たちの製品やサービスの価値は、必ずあります。それを再確認して社会に伝えることができれば、企業の評価は上がるはずです」と髙橋氏はアドバイスする。
新しい視点で社内を見回すことで、それまで気付いていなかった価値を発見することも多い。社員の目だけでは難しければ、第三者、例えば取引先に職場や現場を視察してもらい、顧客目線で自社の価値を探すのもお勧めだ。
まずは視点を変えて自社を見つめ直す機会を作り、埋もれていた価値を見つけることから始めてみてはどうだろう。
常盤工業 株式会社
経営基幹本部 経営基幹部
髙橋脩夫マネジャー(左)橋本成美(右)
1926年創業。建築・土木・住宅を手掛ける総合建設会社。2018年に社長室直轄のマーケティング・ブランディング部署を設立。髙橋氏は同年にキャリア採用で入社し同部署最初の担当者となる。広報に力を入れ、SDGs・イベント開催・ゼロエネルギービル(ZEB)の社屋新築などの話題がたびたびメディアに取り上げられている。現在は同氏と新卒2年目の橋本氏が2人で広報業務を担当。
●浜松市中央区新津町