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駆動系専門メーカーが新事業創出に挑む(株式会社ユニバンス)

2025年01月01日

既存事業で培った固有技術を活用し、新事業分野への進出を模索

目指すは車両用製品集中戦略からの脱却駆動系専門メーカーが新事業創出に挑む

株式会社ユニバンスは、商品開発から設計、機械加工、組み立てまで一貫生産を行う自動車の駆動系専門メーカー。クルマのEV化が進む中、保有する技術開発力や生産力をベースに、航空機分野での事業創出の可能性を探っている。県西部における製造業の中核企業として、地域企業と新しい産業分野とのつなぎ役となる期待がかかる。

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湖西市に本社を構える株式会社ユニバンスの事業の主軸は、自動車のトランスミッション、トランスファーなど駆動系ユニットの生産だ。国内自動車メーカーや海外企業と幅広く取引をしている。

強みは素材の仕入れから設計、組み立てまで一貫生産できること。自社で市場ニーズを探り、先行開 発を行う提案型製造が特長で、実験設備などの環境を備え機能評価も可能。

「2030 年には世界で販売される日本車の30% がEVをはじめとする次世代車になる予測が出ています。既存のガソリン車の部品生産量は減少するでしょう」と語るのは、航空機プロジェクト主査を務める久幾田忍氏。

そこで同社では、昨年度から「バリュー創出プロジェクト」という取り組みを始めた。自動車以外の分野で事業を創造する活動だ。

 

伸びしろのある分野を求めて

「まず始めたのが市場ニーズの 調査。弊社が得意とする高精度のギヤ生産、部品の高効率化や小型軽量化技術を使って、どんな業界に適応できるのかを探るためです」と語るのは、課長の中島敬晃氏。そこで、航空機、医療機器、農業、再生可能エネルギー分野などを幅広く調べ、参入の可能性を探った。現在も継続して検討する中で、狙いを定めた分野が航空機部品業界である。

理由の一つ目は、世界的な感染症の流行が収束し、今後の旅客需要拡大による新しい旅客機の開発や製造数の増大が見込まれ、サプライチェーンの拡大再構築が求められていること。

二つ目は、旅客機の機体やエンジンには多種多様なギヤが使われており、参入可能な領域が残っていると判断したこと。

三つ目は、航空機部品は軽量化要求が高く、品質管理も厳しい。ここで結果を出せば、その技術は EV部品および既存事業に波及するだけでなく、宇宙産業への参入の足掛かりになることだ。

 

顧客に貢献するTier1.5へ

航空機部品業界の調査を進める中で、ノコギリ発注という業界特有の下請け構造があることも分かってきた。海外航空機メーカーから発注を受けた国内Tier1(ティアワン、1次請け)企業が、1 工程ごとに協力会社への発注と納品を繰り返して製造を進める取引形態のことだ。

下請け企業は設計図通りに部品を加工し、国内Tier1 企業が納品ごとに品質を確認。それがリードタイムの長期化、管理・物流コストの増大につながっている。

この構造からの脱却は航空機部品業界全体の課題といえる。そこでユニバンスは、今年度から「航空機プロジェクト」を発足し、新規事業化の可能性を探りつつ、 Tier1 へプラスアルファの価値を提供するTier1.5※ になることを目標に掲げる。

一貫生産を強みとする同社なら、国内Tier1 企業から一括受注し、協力会社と連携して加工を行うこ とで、資材調達から納品まで一元管理できる。自社で商品開発をしてきたことから生産技術・開発サポートも可能とみたためだ。

 

地元と新産業との架け橋として

当商工会議所でも、宇宙航空技術利活用研究会(2005 年発足)による業界研究や、同研究会から発展し、航空機部品の共同受注を目指す企業グループ「浜松航空機産業プロジェクト(」2010年発足)の設立支援など(現在は協同組合 SOLAE「ソラエ」に移行)、宇宙航空分野の潜在性にかねてより着目。

今年度は宇宙航空産業への参入支援を強化し、国内大手重工メーカーのOB2名に販路開拓のためのアドバイザーを委嘱した。

ユニバンスが航空機部品業界へ の進出を探索していると知ると、重工OBの一人と共に同社を訪問。航空機産業への参入意欲を確認し、航空機プロジェクトの内容を共有した。

輸送用機器部品のTier1 企業として培ってきた技術と環境を活用しながら、異分野進出を目指す同社。航空機部品業界においても川下に近い位置を担うことで、新しい技術やネットワークを地域にもたらす効果が期待できる。

航空機産業は中長期的な成長が見込まれ、必要とされる部品点数も非常に多い。また、隣の愛知県を中心とする中部地域は、日本における宇宙航空産業の集積地でもある。

高度な品質要求ゆえに参入障壁は高いが、同社の挑戦が浜松・湖西地域の製造業に新しい風を送ることを願っている。

 

株式会社 ユニバンス 事業開発本部 航空機プロジェクト

久幾田 忍 主査(上)中島敬晃 課長(下)

1937年創業。乗用自動車および産業車両用トランスミッション、トランスファー、減速機など、駆動系ユニットを製造する専門メーカー。東証スタンダード上場。湖西市に2工場、浜松市に1工場、海外に3工場と1営業所を展開する。「バリュー創出プロジェクト」と並行して社内公募型の新事業創出プログラムを実施し、入手困難な旧車の部品を受注生産する新規事業サービス「Rebirth Drive」を開始している。

● 湖西市鷲津

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