新素材で切り拓く、販路開拓の挑戦(株式会社美浜工業)
異業種との出会いで広がるビジネスチャンス
新素材で切り拓く、販路開拓の挑戦
主に輸送用機器などのアッセンブリー事業を展開する株式会社美浜工業は、発案した自社製品のPRを目的に総合展示会「テクノフロンティア2024」に共同出展。主軸の事業では実現しにくい異業種との出会いなど、これまでの展示会とは違う確かな手応えを得たという。
オートバイなどの輸送用機 器や電気機器の部品組立、金属加工を主力事業とする美浜工業。リーマンショックによる大きな打撃を教訓に、2011年ごろから樹脂材料メーカーと連携して自社製品の開発に取り組んできた。その当時、自社の工場で抱えて いた課題の一つが、製品であるヘッドライトやテールライトに電気ケーブルを取り付ける際、外観面に小さな傷が生じてしまうことだった。
対策のためゴム製の保護カバーを作製したものの、消耗が激しく3~4カ月で破損。フェルト製カバーは異物混入による新たな傷を生む可能性があり、いずれも抜本的な解決には至らなかった。
そんな試行錯誤の中で生まれたのが、型取り資材を転用した「ソリッドフリー」だ。
この新しいプラスチックは、 60度に温めると餅のように軟らかくなり、冷えると固まる特性があり、部品の形状に合わせてぴったり成形できる。他のプラスチックより柔軟で、ゴム板よりも強度があるため、折れたり、部材を傷つけたりする心配もない。
保護カバーとして使用したところ、ライトの傷を大幅に削減することに成功。早速、自社商品として販売に乗り出した。
「誰でも簡単に使えるとあって、工具の持ち手のひび割れ補修や、ラベル貼りのガイドなど、さまざまな用途での業務改善に役立っています」と、同社第2製造部の寺田博治氏が説明する。
2018年には、より大型で人体の型取りもできる「ソリッドフリークロス」を開発。大手輸送機器メーカーにも採用されるなど、活用範囲を広げている。
共同出展で来場者3割アップ
美浜工業が出展した「テクノフ ロンティア(部品加工技術展)」は、技術者へのアプローチや、新たなサプライヤーの開拓をメインにした展示会。来場者の半数以上がものづくり関連企業で、決定権を持つ役職者が多く来場するのが特徴だ。
「浜松市と商工会議所の支援による8社共同出展だったことで、単独出展と比べ来訪者は3割増えました。白を基調とした空間デザインも来場者に良い印象を与えたようです」と寺田氏。これまで参加した展示会の中で、一番の成果を得られたと話す。
インナーウエア事業を手掛ける異業種との出会いをはじめ、企業プレゼン後には東北に拠点を置く大手ものづくりメーカーとの商談が決まり、ソリッドフリーの納品が実現した。
また、企画やマーケティング部門の担当者との接点も生まれ、メーカーが求めるニーズや課題を直接ヒアリングでき、今後の製品開発のヒントも得られた。
「普段なら、なかなか取引できない企業と商談できたのは大きな収穫でした」と寺田氏が手応えを語る。
▲自社コーナーでは、DIY感覚で簡易に成形できる樹脂板製品「ソリッドフリー」を展示
出展を通じて事業を育てる
ソリッドフリーを入口に、デジタル画像処理装置などに使う自社製防振台の販売拡大につなげていくことが今後の課題だという。
「事業の多角化を進めるには、異業種との接点が不可欠です。今回の展示会出展はとても良い経験になりました。衣食住関連、食品分野、ハードルは高いですが医療分野にもチャレンジしていきたいですね」と意気込む。
株式会社 美浜工業 第2製造部 寺田博治部長
1963 年創業。輸送用機器部品の組立事業では、大手二輪車メーカーのTier1(ティアワン、1次請け)として2000 種類に及ぶ部品を管理し、最適な手順で製品化する独自の生産システムを構築。ウレタン樹脂製造事業では、熱可塑性プラスチック「ソリッドフリー」をはじめ、防振台などを手掛ける。
●浜松市浜名区東美薗